中級者以上のかたで、「お前のアドリブには心が無いんだよ! もっと人生経験を積んで、ソウルっつかー、哀愁っつーか、ブルースっつーか、ほらあれだ。とりあえずウイスキーを呑んでだなあ、人生の機微っつーか、とにかく! 俺らの若い頃はだなあ、潰れるまで呑むのが当たり前で……」みたいなウザいおっさんにつかまって、延々30分の説教をされ、コップの水を顔面に引っかけるのをプルプルする手でこらえた経験があるアナタ。

アナタに足りないのは、人生経験ではなく、「いないいないばあ」かもしれません。

赤ちゃんを喜ばせるには?

赤ん坊は何度も何度も「いないいないばあ」をせがんできます。人間は「反復」を求める生き物なのです。だけれども、単純な反復は「飽き」を生み出します。ですから、バリエーションを加えるのです。「いないいないばあ」を10回繰り返し、徐々にテンションを高めた後、「いないいないーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーばあ!」とタメを入れてみましょう。ほら、ウケたでしょ?

モチーフ・ディベロップメント

これを音楽用語では小難しく「モチーフ・ディベロップメント(motif development)」と呼びます。「モチーフの発展」の意味です。

実はこれ、作曲の技法でもあります。唱歌「ちょうちょう」を例に取って解説してみます。(野村秋足作詞 スペイン民謡)
「ちょうちょう ちょうちょう」歌詞が反復しています。メロディーは「ソミミ→ファレレ」と同じ音型を反復し、かつ、下降という発展をしています。
「菜の葉にとまれ」
「菜の葉に飽いたら」さきほどのメロディに1音ずつ加わるという発展をしています(「ソミミミ→ファレレレ」)。
「桜にとまれ」
「桜の花の 花から花へ」メロディー「レレレレレミファ→ミミミミミファソ」と上昇の発展をしています。
「とまれよ 遊べ 遊べよ とまれ」歌詞が反復していますが、逆さまになるという発展を見せています。メロディーは先程出てきたもののほぼ反復です。

ジャズピアノのアドリブの実例としては、枚挙に暇はありませんが、一例として、ハービー・ハンコックが、パット・メセニー、デイヴ・ホランド、ジャック・ディジョネットと一緒に演奏した1990年ライブの「ソーラー」などいかがでしょう?

単に僕の昔の愛聴盤だというだけなのですが、個人的には「これがジャズのモチーフ・ディベロップメントなのか!」と目からウロコだった音源です。

【まとめ】「アナタのアドリブは、なんとなく指が動いているだけで、何も伝わってこない」と言われてしまう人は、モチーフ・ディベロップメントのアイディアを実践してみるのはいかがでしょう?